Topics 2002年11月1日〜10日     前へ     次へ


6日(1) 中間選挙結果
6日(2) アメリカの職人気質
7日(1) 中間選挙結果(その2)
7日(2) Kennedy家とRepublican
8日 Federal Fund Rateの切り下げとProductivity

6日(1) 中間選挙結果 Source : CNN Election 2002
現時点での投票結果は次の通り。 依然集計中の選挙区が残されているものの、上院、下院とも共和党が制した。未定の選挙区の結果次第だが、来年からの議会では、医療や企業年金関係の課題に関する検討が、一気に進むことも考えられる。これから2年間、与党が議会をコントロールすることが、ブッシュ大統領の再選にとってどう影響するのか、注目していきたい。

それにしても、ブッシュ大統領の中間選挙日程をにらんでの戦略は、単純とは言え、見事なものであったと言えるだろう。対イラクについて、民主党の譲歩を引き出しながら、国内問題、特に医療、企業年金問題については、民主党がmajorityを握る上院が改革を阻害しているという構図を作りだし、国民にアピールしてきた(Topics 「10月20日 401(k) なくなった改革ポイント」、「10月21日(2) 処方薬の処方箋」、「10月23日 Bush版処方箋への反応」参照)。まさにそれが実って、上院のmajorityも共和党が握ることとなったわけだ。

さて、私が住むBethesda地区の結果は、次の通りとなった。 下院議員選挙では8期勤めた現職のMorellaが破れ、知事選では現副知事のTownsendが破れた。要するに、変化が求められたということだろう。特に、民主党の地盤が強いメリーランド州で、36年ぶりに共和党知事が誕生したのは、まさに変化を求められたということではないか。

Townsendの敗北で、『英語を公用語と定める州法案に拒否権を発動する』(Topics 「9月23日(1) ヒスパニックと選挙公約」参照)という事態は回避された。そのTownsendの得票を分析した記事がWashington Post紙に掲載されていた。簡単に要約すると、Townsendが過半数を制したのは、24の選挙区のうちわずか3選挙区(Montgomery 61%、Baltimore 75%、Prince Georges 77%)しかなかった。都市部であるこの3選挙区で大勝した為に、最終結果は僅差になっているものの、その他の地域では、全滅となっている。民主党の基盤も都市部に限定されたものとなってしまったのだろうかと疑いたくなる。

これで、今回の中間選挙で、Kennedy家からの候補は2戦2敗となった(Topics 「9月12日 Maryland州第8選挙区」参照)。Kennedy家の神話も、もう通用しなくなっているようだ。

一方、下院第8選挙区についても、得票分析が同紙に掲載されている。Van Hollenの得票率を見ると、Montgomery County 51%、Prince George's 79%と、州議会による選挙区変更作戦(Topics 「9月12日 Maryland州第8選挙区」参照)がものの見事に的中した形となっている。このような選挙区変更が、次の下院選挙で再び民主党候補に有利に働くのかどうか、まだ遠い先だが、注目しておきたい。

6日(2) アメリカの職人気質
私事だが、今日、我が家の暖房装置の取替え作業が行われている。今年は昨年と打って変わって寒さが早くやってきた。ところが、我が家の暖房は、どんなに気温が下がっても作動しないのだ。朝晩となると足先まで冷たくなっていたのに、である。たまらず大家(在ドイツ)に相談したところ、暖房装置のボイラーを取り替えることになった。

なるべく早く作業をしてもらおうと、今週初め、月曜日の朝一番に業者に電話したところ、今日、水曜日の朝8時に来ると言う返事だった。

本当に朝8時なんかに来るのかな、結構大変な作業になるので、作業員もたくさん必要だし、肝心のボイラーだって持ってこなければならない。まあ、午前中に来ればよしとしなければ、と思っていた。

ところが、今朝、子供達をバスストップまで連れていくために外に出てみると、既に業者の車が家の前に駐車している。午前7時55分だ。立派なもんだ。しかも、8時になるまで、車の中で待機していたのだから、ますます立派だ。挨拶をすると、早速工程の説明があり、注意事項も話してくれた。その作業員は、8時になるとすぐに家に入っていき、下準備を始めた。そのうちに、他の作業員2人もやってきて、8時15分頃には、新しいボイラーも到着した。

Topics 10月31日 Executive達のseverance pay」でも書いたように、私がこれまで経験したこの手の約束の中で、時間や作業に正確だったのは、GEとSearsの作業員達だけだった。ところが、今日の配管工事の職人達も、時間に正確だし、顧客に対しての態度も立派だった。この話を同僚にしたところ、引越作業員もよかったと話していた。

何度も書いているが、アメリカ人(または社会)は、システムを作り上げるのは上手だが、現場がその通りに動いていないことが多い。最近経験したことだが、救急治療もできるような大病院の治療費請求が送付されてきた。私達家族は、当地での保険に加入しており、その治療費も保険でカバーされるものであった。窓口では、それがちゃんと確認され、私達への請求はなかったものの、1ヶ月半もたって突然、請求書が送られてきた。この請求書の送付元は、件の大病院の治療費請求を代行しているサービス会社である。早速、問い合わせの電話をしたところ、名前も住所も加入保険も皆コンピュータに登録されている。ではなぜ請求書が送られたのか、と質問したところ、保険会社に請求をしていなかった、という理由だった。おそらく、保険会社からの支払いがないまま一定の期間が経過すると、患者本人に請求書が自動的に送られるのだろう。しかし、保険会社への請求を怠るという初歩的なミスを犯していると、このシステムは何の役にも立たない。むしろ、顧客に不快感を与えることになる。

アメリカの企業は、作業工程や顧客サービスのシステム化により、合理化に成功してきた。しかし、肝心な現場を疎かにしている傾向がある。先述の作業員のように、現場の職人達には、時間を守る、作業を的確に行うという気質がまだまだ残されている。そうした職人気質を無にしてはいけないのだと思う。

幸い、日本の企業には、依然としてもの作りに執着する気風が残されている。こうした考え方は重要だと思う。合理化を名目に、大事な職人気質を失わせるようなことがあってはいけないと考える。

7日(1) 中間選挙結果(その2)
中間選挙の最終結果は次の通りとなった。

中間選挙最終結果
上院(改選前)上院(改選後)下院(改選前)下院(改選後)州知事(改選前)州知事(改選後)
民主党50482112042124
共和党49512232282726
無所属11112-

注:2002年12月8日時点。下院に未定が2議席ある。


上院の無所属は、元共和党員のジェフォーズ議員である。未定の議席が民主党となり、ジェフォーズ議員が民主党員となり、あと一人共和党から寝返らない限り、共和党のMajorityは揺るがない。

上下両院のmajorityを握った共和党の優先政策課題を見ると、医療関係では、Medicare改革(処方薬を対象にする)、患者の権利法(いずれもTopics 「2月11日 大統領医療改革提案」参照)、また企業年金関係では、懸案となっている加入者保護に関する規制(Topics 「10月20日 401(k) なくなった改革ポイント」参照)が挙げられている。なお、公的年金の個人勘定創設は優先課題として認識されていないことを、念頭に置いておきたい。

いずれも、第107議会で、下院法案は可決されたものの、上院で審議未了となったものばかりだ。上院のmajorityを共和党が握ったとはいっても、予算関連の採決や審議終了動議のために必要な60議席には遠く及ばない。共和党が、優先課題について審議を進め、上院案を可決する、さらには両院協議会で成案を得るためには、どうしても民主党または民主党議員の協力が不可欠となる。

上記の医療、企業年金関係の課題の鍵を握ることになるのは、上院HELP委員会(Committee on Health, Education, Labor and Pensions)の委員長になると目されているJudd Gregg(R-N.H)議員である。彼は、保守的な考え方の持ち主であるが、非常に現実的な対応をする議員と言われている。現HELP委員長であるEdward Kennedy(D-Mass.)議員指向とは異なるものの、これまで何度も協調してきており、この分野で民主党の協力を引き出すのには適役と言えよう。今後は、このJudd Gregg議員の言動に注目していく必要がある。

7日(2) Kennedy家とRepublican
昨日のTopicsで、『Kennedy家の神話も通用しなくなったのか』と書いたが、今日のWashington Post紙に、「The Dimming of the Kennedy Aura」という記事が掲載された。この記事によると、今回の中間選挙では、Maryland州知事選に敗れたTownsend、下院Maryland州第8選挙区の民主党予備選で敗れたMark Shriverに加え、Townsendの弟のMax Kennedyは、Massachusetts州選挙区の下院選挙に不出馬を表明し、義理兄弟のAndrew Cuomoは、New York州知事選挙に出馬して敗れた。つまり、今回の中間選挙で、Kennedy家は、3戦3敗1不戦敗ということになる。

ところで、先述のMark Shriverの実姉、Maria Shriverは、西海岸では有名なニュースキャスターである。私は今回初めて知ったのだが、このMaria Shriverは、何とあのArnold Schwarzeneggerと結婚しているではないか。シュワちゃんと言えば、かつては州知事にうってでようかと発言したこともある、バリバリのRepublicanだ。そのシュワちゃんと、身内全員が民主党で固められているMariaと結婚しているのだ。

今回の中間選挙で、我が家の周辺のお家は、それぞれの庭に、「Van Hollen」-「Townsend」とか、「Morella」-「Ehrlich」と書いた看板をさしていた。また、車にも候補者の名前の入った大きなシールを貼っていた。それらは、いずれも共和党候補同士、民主党候補同士の名前を連ねてあり、決して「Van Hollen」-「Ehrlich」とか、「Morella」-「Townsend」という組み合わせはないのである。家の庭に候補者の名前の看板をさすということは、その家の家族全員が共和党なり民主党なりの党員というか支持者ということなのだろうか?夫婦のうち一方が民主党で、他方が共和党ということはないのだろうか?と疑問に思っていた。

確かに、シュワちゃんとMariaの例があることはわかったが、Mariaが民主党員または民主党支持者なのかはわからない。アメリカ人は結婚する際に、相手の支持政党を確認したりするのだろうか?もし違う政党を支持していることがわかったら、結婚しないのだろうか?こんな疑問にどなたか答えてくれないでしょうか?

なお、Kennedy家の家族関係は、次のwebsiteが参考になります。

my homepage on the Kennedy Family

The KennedysThe Kennedy Family Tree

8日 Federal Fund Rateの切り下げとProductivity Source : Press Release dated Nov. 6 (FRB)

6日、FOMCは、Federal Fund Rateの目標値を0.5%ポイント引き下げて1.25%に、またFRBの銀行向け貸し出し金利をやはり0.5%ポイント引き下げて0.75%にすると発表した。Federal Fund Rateは、1961年7月以来の低水準、FRBの貸し出し金利は、89年の歴史上最低の水準となる。

2001年1月の6.5%水準から、数次にわたる引き下げで2002年12月には1.75%となっていた。それを約1年経ったところで、さらに引き下げたことになる。

上記Sourceや報道を見ていると、労働生産性は依然堅実な伸びを示しており、インフレ懸念も低いものの、FRBは、最近の経済指標、中でも消費支出、企業の資本財の購入、製造業の生産などが弱まっていることに加え、雇用がなかなか改善しないこと、失業率が高止まりしていることなどを懸念しているようだ。また、対イラク関係の悪化も懸念材料として挙がっている。

懸念材料があることは理解するが、上記のように、歴史的にも稀な水準まで基準金利を下げるべきであったかどうか、私には疑問だ。目先のトレンドを少しでも変えようという狙いは理解できるが、絶対水準として適切かどうかの判断も必要だ。

FRBの基準金利が下がれば、大手企業向け貸し出しであるプライムレートは若干下がるだろう。しかし、リスクの高い中小企業向けや、消費者ローン、クレジット・カードの利率は、既に最低水準まで来ており、これ以上の引き下げは見込み難い。住宅ローンについても同様なことが言えるだろう。既に下がるところまで下がった金利水準を若干下げたところで、経済全体へのインパクトは大きくあるまい。

一部には、これ以上の金利引下げは行わないとのメッセージである、との解釈もあるようだが、経済は水物であり、どんな外的ショックが起こるとも限らない。その際に、金利をまだ充分引き下げられるだけの余地を残しておかなければ、金融政策は手詰まりになってしまう。まさに日本銀行がそういう道を辿ってきたのではないだろうか。いまや日本銀行は金融政策においては無力である。何も有効策を講じることができない。銀行の保有株式を買い取ることは、金融システムの維持には貢献するかもしれないが、経済政策としての金融政策でもなんでもない。

経済政策というと、安直に財政政策だの金融政策だの、ポリシーミックスだのという議論になるが、それに頼りすぎるのは禁物である。薬と同じで、短期間に服用を繰り返せば効果が薄れ、体の抵抗力そのものを失わせてしまう。そして、いざ大物ウィルスが侵入してきたときには、もう対処できない体になってしまう。

日本もアメリカも、少し経済の見方が短期に過ぎるのではないかと懸念している。依然、経済指標の読み方は、1年前との比較(前年同期比)で行われていた。それが今は、前期比(前月比や前四半期比)が大勢となっている。経済の変化は早いとは言え、余りにも気が短すぎる。余地を残すことの大切さをもっと認識すべきではないか。

話を戻して、FRBが金利引下げを発表した翌日の7日、労働省から労働生産性統計が発表された。第3四半期の生産性(Nonfarm business)は、年率4%であった。また、直近1年間の伸び率も5.3%と高く、1983年第3四半期以来の伸びとなった。また、近年のトレンドは次の通りだ。

PRODUCTIVITY

このグラフを見ても、現在のアメリカ経済が危機的な状況にあるとは思えない。確かに生産性の向上は、すぐには雇用や所得の向上には反映されない。タイムラグがあるのは当たり前だ。渋滞の先頭がいつも止まっているわけではないのと同じことだ。これだけ生産性が好調であるのに、ただでさえ低水準の基準金利を引き下げる必要があったのか。ここしばらくのアメリカ経済の動向を見守ることにしたい。

(追記)

大事なことを書き忘れていたので、追加する。

金利の引き下げは、多くの大企業にとって、負担増の面もある。確定給付型の企業年金、退職者医療制度を持っている企業にとって、金利の引き下げは、拠出額または負債額の増大を意味する。従って、これだけ極端に低い水準の金利は、企業のバランスシートに悪影響をもたらす可能性もある。
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